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『アメリカン・サイコ』の生みの親が、リベラル系メディアを嫌う理由

ローリングストーン日本版 のロゴ ローリングストーン日本版 2018/08/11 11:18 Drew Fortune

© Culture Entertainment Co.,Ltd. 提供 『アメリカン・サイコ』や『レス・ザン・ゼロ』で知られる小説家で、1990年代の「ジェネレーションX」を代表する作家の一人、ブレット・イーストン・エリスの最新インタビュー。

小説家のブレット・イーストン・エリスは、過去30年以上に渡り、超バイオレンス、カジュアルなニヒリズム、アメリカの浅はかさへの批判について論じてきた。著書『帝国のベッドルーム』の出版から10年近くが経ち、エリスは空回りを始めたように思われた。近年手がけた映画脚本には厳しい評価が下されているが、確かにリンジー・ローハンとジェームズ・ディーンの出演したエロティック・スリラー『ザ・ハリウッド』(2013年)は、大ヒット作品とはならなかった。”ブレット・イーストン・エリス”ブランドは、かつてのような商業的影響力をもはや持っていないようにも思われた。しかし54歳となったエリスは今、幸せである。『アメリカン・サイコ』がミレニアルの試金石となり、今は『レス・ザン・ゼロ』のパイロット番組向けの脚本が書き上がったところだ。エリスの処女作を元にした同作品は、Huluで10回のミニシリーズが企画されている。年齢とともに落ち着いてきたとはいえ、パトリック・ベイトマンの生みの親は今なお、立派に人々を怒らせる力を持っている。

長い間メディアやネット上で同性愛者を装いながら、半自叙伝的小説『Lunar Park』では主役に妻と子どもたちを持たせるなど、人々を煙に巻いた彼は、自分のアイデンティティ、政治的見解、世界観を公開討論会の場にする境地にまで達した。第1回目はカニエ・ウェストをゲストに迎えて2013年に始まった『ブレット・イーストン・エリス・ポッドキャスト』は、映画、音楽からポップカルチャーや政治に至るまで、文学界のブラット・パックの思うままをぶちまける場となっている。2018年エリスは同ポッドキャスト番組を、パトレオン(クリエイター向けのクラウドファンディングサービス)を通じたサブスクリプション・サービスとして、1番組あたり1.5ドルまたは月あたり10ドルで提供開始した。登録ユーザーは、エリスやゲストとのQ&Aに参加できる。ポッドキャストの有料番組にお金を払うのは愚か者のすることとみなされている時期にエリスは、たとえ思い通りに行かなかったとしても、ひとつの実験として実施した。

私たちは彼のビバリーヒルズの自宅で話を聞いた。

ー有料コンテンツを始めたきっかけは何でしょう?

パトレオン・モデルはトリッキーで、支払い方法も複雑だ。本来私が望んだものではないし、開始当初の目論見とは少し違っている。間違いなく聴取者を限定することになるが、ある意味、自制して2週間ごとにポッドキャストの番組を作らねばならない状況も楽しんでいる。毎回私は関連するひとつの仕事として、30〜40分間のモノローグを用意している。だから1番組あたり1.5ドルを課金しても問題ないんだ。もしも番組が、自分と友人だけが出演し、昨夜のテレビ番組についてのくだらない話をしゃべるような類のものなら、気がとがめるだろう。だから人々がポッドキャストにお金を支払うことはないだろうと、私は考えてきた。支払う人もおらず、課金に対しては大きな抵抗があると思ったのだ。私は、人と同じことをしていてはいけないと思っている。平均的とか普通ではいけない。それが思い上がったエゴに見えても、それは構わない。

ーかつて自分のツイートが原因で攻撃を受けたことがありますよね。今、自分が書いたり発言したりすることで酷評を受けることを恐れていますか?

今は皆が、口輪をはめられているように感じていると思う。それは結局、自分がどれだけ稼げるかということにつながる。「私の思いや意見を述べてもよいですか」と言えば断絶や亀裂が起こり、その状況に耐えて何もなかったように振る舞うか、身を潜めるかを選択することとなる。隠れた生活など、私には想像もつかない。今の私は、完全に率直な人間として自分の意見を表現できることにとても満足している。

ー現在はあなたにとって、文化的に退屈な時代ですか?

私は20代、30代、40代の頃よりも間違いなく批判的になっている。それが年齢のせいなのか、文化がかつてよりも本当に退屈だからなのかは、わからない。私は今もなお興味津々で、そこが私と多くの友人たちとの違いだ。私はテレビをよく観るし、映画館へも足を運ぶ。若者が勧める音楽を聴くし、新しいフィクションなどの本も読む。それらの中から今も私は、自分のお気に入りを見つけることができる。”行ったことがある”とか”やったことがある”という単調さが今の文化にあったとしても、そのような好奇心は今なお効果を生んでいる。

ーリベラルの人たちとディナーしながら政治について語り合った、とツイートしていました。それは誰もがお決まりのショックや怒りを演じているからでしょうか?

まさにその通り。私は、トランプを嫌うミレニアル世代の社会主義者と同居している。私のボーイフレンドが証明してくれると思うが、私は政治に関心を持っていない。私は政治を巡る戦いの場に興味がある。対立する同士の戦い方や、メディアの変わり身が面白い。今ほどリベラルが鬱陶しいと思ったことはこれまでなかった。最高裁に対する絶望感や収容施設の様子を延々と流すリベラル系メディアのやり方など、この数週間は私にとって本当にいまいましい時間だった。明らかにゲームだ。レイチェル・マドーがTV番組で泣いて見せ、トランプと収容所の写真が映し出される。ユダヤ系ポーランド人の継父は、まだ幼児の頃に家族全員が殺害された。ナチやゲシュタポなどの単語を乱用したり、ワイマール共和国に例えることは、「あなたはそこへ行こうとしているのか?」と言うのと同じ。もうウンザリだ。#WalkAwayムーヴメントがあっという間に広まったのには理由があると思う。民主党への失望感だよ。多くの人々が興ざめしたのだ。

ーゲイとして、結婚する権利が突然剥奪されたらどうでしょう? 根本的なレベルで怒りを感じるでしょうか?

それは、私がアイデンティティ政治を信奉し、自分のペニスによって賛否の意思を表明することを意味している。移民、経済やその他の政策が、私が男性と結婚できるかどうかという問題よりも重要度がかなり低い、ということを示唆している。私が心配するようなことではないし、気にもしていない。それはアイデンティティ政治に関する問題で、ヒラリー・クリントンをトラブルに巻き込んだ原因でもある。ヴァギナを持つ人間はヒラリーに投票すべきだった、という理屈だ。多くの人々の信条に深く浸透し、そして退かざるを得なくなった。人々は、ひとつの問題だけを取り上げて投票する訳ではない。私はゲイとして投票するつもりはない。同性同士の結婚が許されない、ということはないと考えている。ペンスには問題があるが、トランプはとにかくアンチ・ゲイの大統領ではない。私のゲイの友人の中には、トランプの特定の政策を支持し、投票した者もいる。ゲイであることや、婚姻が認められるか否かとは関係のないことだ。

ー我々はパトリック・ベイトマンの見る夢のアメリカに生きているのでしょうか? トランプは『アメリカン・サイコ』の非情な退屈さをまさに体現しています。

大統領選の晩に私は「パトリック・ベイトマンがどこかでほくそ笑んでいる」とツイートした。私はこの言葉がどのように捉えられるかわからなかったため、投稿を削除することにした。世界を揺るがす自体が起きたことはわかっていた。それは私をナーバスにした。しかし確かに、ベイトマンの見る夢のアメリカなのだ。私はこれまでそこに関連性を見出したことはなかったが、あなたの質問に関しては「イエス」だ。ベイトマンはトランプを崇拝する。彼のアイドルは大統領なのだ。トランプが勝利したとき、アメリカン・サイコの見出しが多く見られたことからも、多くの人々がその関連性を感じたことと思う。

ー2018年、小説『Glamorama』が出版されてから20周年を迎えます。この小説は、過剰なセレブ文化、セルフィー世代、さらに国内外におけるテロの増加までをも予見しました。

この小説は1990年に書き始め、1998年に完成した。インスタグラムに登場するセレブやセルフィーへの執着など、ここまで核心を突くとは思っていなかった。私がこの小説を手がけていた90年代には既に、セレブだらけの文化になっていたのだと思う。今では意味のない、くだらないスターダムへの扉を開け、20世紀のセレブたちを皇帝や女王のように仕立てた。それは普遍的な熱狂のようなものだ。そこにあまりにも気を取られていると、のんびりした生活を送り、重要事項に集中するという目標を忘れることとなる。

ー最後に小説を出版してから8年が経ちました。映画『ザ・ハリウッド』は酷評され、脚本を手がけた『The Curse of Downers Grove』はほとんど反響がありませんでした。文化的に軽視されることは、あなたにとって最も恐れることでしょうか?

いいや、最も恐れることではない。それにこの8年間は幸いにもとても忙しくしていた。文化的に軽視されようが構わない。自ら文化的に重要視されることはできない。自分らしくいるしかない。デビューしてから約33年になるが、文化的に重視されるためには、少し嫌われるくらいでないといけないのだと思う。そんなにも長い間、完全に愛される存在でいることはできないだろう。一人の人間として否定されることもあるだろうが、それこそ自分の人格の一部だ。私の作品は人々を苛立たせ、私の社会的人格は人々を怒らせてきた。私は自分に正直でいなければならない。さもなければ幸せな生活を送ることはできないが、私は幸せだ。今は20代や30代の頃よりもずっと幸せで、これまでの人生で最高だ。はっきりとした理由はわからないが、しかしそれが現実だ。

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